腰痛の原因がわからなくても痛みは改善できる。
「腰痛診療ガイドライン(日本整形外科学会)」によると、
骨折や腫瘍などの原因がはっきりしている腰痛に対して、原因がわからない腰痛が全体の85%にも及びます。
脊椎には椎体と言われる骨や椎間板と言われる軟骨、椎間関節と言われる背骨の関節、仙腸関節と言われる骨盤の関節、脊髄や馬尾あるいは神経根と言われる神経、背骨回りの筋肉など様々な組織が存在します。
原因がわからないのは、これらのどの組織が痛みの原因かを特定するのが難しいためなのです。
そこで私は日々の治療の中で薬やマッサージだけに頼らない治療方法を模索してきました。
その一つの答えが運動療法なのです。
腰はいろいろな運動をする際に中心になる運動器なので、運動療法が効果的であると考えるのはむしろ自然なことだと思います。
今回は腰痛の発生と改善の仕組みを知っていただきたいと思います。
椎間板の髄核のズレがどのようにして戻るか、線維輪がいかにして修復されるか知っておくと、腰痛を自力で治していくための理解にお役に立てれると思います。
①人間の背骨はS字カーブを描いている
腰痛が起こる仕組みを理解するにはまず、人間の背骨の構造を知るといいでしょう。
人間の体には椎骨と呼ばれる骨が、縦に積み重なってできており、首の部分は頚椎と呼ばれる7つの椎骨で、背骨の部分は胸椎と呼ばれる12個の椎骨からなっています。腰も同様に、腰椎と呼ばれる5つの椎骨が積み重なっており、この腰椎の下には仙骨という骨があります。
このように背骨を構成する椎骨は、後ろ側には椎弓と呼ばれるリング状の骨があり、脊柱管と呼ばれる神経が通るトンネル構造になっています。椎弓と椎弓の間には椎間関節という関節があり、これが背骨の動きに関係しています。
脊柱管の中には、脳から続く脊髄という神経とその末端部の馬尾という神経が通っています。
神経が背骨から出ていく部分は神経根と呼ばれ、そこから腰や足の筋肉・関節などにつながっていて、足を動かすことができたり、あるいは痛みを感じたりするのです。
②無理な姿勢で線維輪に亀裂が入ると腰痛が起こる
椎骨と椎骨の間には、椎間板と呼ばれる軟骨があり、クッションとして背骨全体の動きを出す関節のような働きをしています。
椎間板の中には髄核というゼラチン状の物質があり、周囲は線維輪という線維組織で囲まれています。髄核は腰椎の動きに伴って線維輪の中で移動し、椎間板を変形させておじぎやそ反らしの動きを行っているのです。
悪い姿勢や腰に負担のかかる動作によって椎間板が歪むと、髄核がずれて線維輪に亀裂が入り、これが腰痛の原因となります。
さらに、椎間板の栄養は、周囲組織からの組織液の拡散に頼っているため、栄養が届きにくい組織になっており、一度組織が傷むと、なかなか治りにくいという特徴があります。ぎっくり腰を起こすとクセになるというのは、椎間板が修復しにくい組織だからなのです、
髄核のズレや線維輪の亀裂が、腰痛のすべて原因とは限りません。しかし、ぎっくり腰が起こるタイミングや腰痛が体操や姿勢により改善することを説明するのは、椎間板の状態を考えると説明しやすいのです。
椎間板の髄核のズレがどのようにして戻るのか、線維輪がいかにして修復されるかを知っておくと、腰痛を自力で治していく上での、モチベーションの持続や再発した時の理解にもつながり、腰痛の自力改善につながります。